
研究概要
生成モデルによる筋電位パターンの合成と複合動作の識別
手指や手首の動作を筋電位から識別するシステムを実用化する際,大きな障壁となるのが学習データの収集コストです.実際の上肢動作は,手首の屈曲と手指の把握が同時に生じるような「複合動作」が大半を占めますが,基本動作の組み合わせは膨大であり,そのすべてを事前に計測することは現実的ではありません.
そこで本研究では,計測済みの基本動作データから未計測の複合動作の筋電位パターンを擬似生成し,これを学習に利用することで,一度も計測していない動作を識別可能にする枠組みを構築しています.最も素朴な考え方は,基本動作のパターンを信号のまま重ね合わせて複合動作をつくることです.しかしこの発想は,複合動作が基本動作の線形結合として表現できることを前提としており,筋の同時収縮(co-contraction)のような非線形な神経筋現象によって前提が崩れると,合成したパターンが実際に計測される信号から乖離してしまいます.
この限界を克服するため,変分オートエンコーダ(VAE)などの生成モデルによって筋電位信号を低次元の潜在空間へ符号化し,複合動作がその構成要素である基本動作の「間」に位置するよう,潜在空間そのものを構造化するアプローチを進めています.適切に構造化された潜在空間の内部で擬似パターンを生成すれば,信号を単純に重ね合わせる場合よりも実際の筋活動に近いパターンを得ることができ,未計測動作に対する識別性能の向上につながります.
技術的アプローチ:
- 基本動作パターンの重ね合わせによる複合動作の合成
- 混合の一貫性を考慮した潜在空間の構造化
- 構造化された潜在空間での擬似データ生成と識別器の学習
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